地方での医師不足解消に向け、都道府県から奨学金の貸与を受ける代わりに、卒業後、その地域で一定期間働く大学医学部の「地域枠制度」に関し、厚生労働省は28日、2018年度分を調べた結果、全国の22大学が設けた募集枠で定員の2割を超える欠員が出ていたことを明らかにした。地方勤務を希望する学生が少ないことなどが原因。地方と都市部の医師偏在を解消するための措置が問題解決に結び付いていない現状が明らかになった。
地域枠がある66大学のうち、半数の33大学で計187人分の枠が埋まっていなかった。
制度が導入された08年度から18年度の通算では、学生を勤務地の制限のない「一般枠」に振り分ける不適切な運用もみられた。医学部定員は地域枠に限り、臨時の定員増が認められており、厚労省と文部科学省は制度の趣旨に反するとして、改善とともに制度の厳粛な運用を求めている。
厚労省によると、定員の8割未満だったのは、東北大(定員33人中17人、充足率52%)、千葉大(20人中4人、20%)、信州大(18人中2人、11%)、久留米大(5人中0人、0%)など。
地域枠入試では、地域枠と一般枠を区別して選抜する「別枠方式」と、一緒に選抜し入試前後に希望者を募る「手挙げ方式」がある。今回の調査で、別枠方式だと、地元出身者に限定しない募集でも、9割以上が埋まっていることが判明。充足率が低かった信州大や千葉大、東北大は手挙げ方式で、入学後に希望者を募る「事後型」だった。
厚労省は10月、過去11年間で計約2600人分の地域枠が埋まっていなかったと発表。文科省と合同で調査し、今回初めて大学名まで明らかにした。厚労省は既に、20年度以降に入学する学生の選抜に関して、別枠方式に一本化するよう都道府県へ通知。文科省も、充足率が低い医学部の地域枠については、定員を削減する方針を決めている。
調査結果は、28日に東京都内で開かれた、医師の偏在対策を議論する厚労省の有識者会議で報告された。
(共同通信より)