中高英語力

中高英語、達成は36%、政府目標50%は遠く、中3は初の低下

文部科学省は5日、全国の公立中高生を対象にした2016年度の英語教育実施状況調査の結果を発表した。高校3年生で実用英語技能検定(英検)準2級、中学3年生で英検3級程度以上の英語力を持つ生徒はともに36%台で、「17年度までに50%」という政府目標の達成は厳しい状況となった。同省は英語力が向上した取り組みを自治体間で共有するなど対策を急ぐ。

 調査は昨年12月、全公立中高計1万2850校を対象に実施。英検準2級、3級程度の水準に達した生徒の割合は、高3で前年度比2・1ポイント増の36・4%、中3は0・5ポイント減の36・1%だった。いずれも12年度の調査開始以来上昇が続いていたが、今回の調査では中3で初めて低下に転じた。上昇ペースは鈍く、目標達成は難しくなった。

 都道府県ごとにみると高3は富山(47・3%)、中3は奈良(48%)がトップだったが、いずれも政府の目標には届かなかった。都道府県別の公表を始めた前年度に続き、上位と下位で20ポイント以上差が開いた。最下位は高3が高知(24・6%)、中3は熊本(26・3%)だった。

 調査では試験で資格を取得した生徒に加え、日ごろの授業やテストから同等以上の力があると教員の裁量で認められた生徒も、水準に達した数に含まれる。裁量認定された中3の生徒数は資格取得者とほぼ同数で、高3では1・8倍に上った。教員や地域ごとの評価基準のばらつきを指摘する声もあるが、文科省は「各地で教員研修を重ね、評価の標準化に努めている」としている。

 英語力が伸びた自治体の中には資格試験の検定料を補助したり、外部試験を導入したり、独自の取り組みをするケースが多い。文科省はこうした事例をまとめ、全自治体で共有する。

中高英語力

中高英語力

中高英語力

中高英語力

英語教員を対象にした調査も実施。英検準1級以上に相当する資格を持つ教員は高校で4・9ポイント増の62・2%、中学で1・8ポイント増の32%だった。政府は「17年度までに中学で50%、高校で75%」という目標を掲げており、こちらも達成は厳しそうだ。

 政府は世界で活躍するグローバル人材の育成に向け、英語教育の強化に取り組む。19年度には全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、中3全員を対象に英語の新テストを導入。20年度からは小学校で「外国語活動」の開始が小3に前倒しされ、小5・小6では英語が正式教科となる。

学力テストに英語、4技能図る 19年度から

文部科学省の専門家会議は29日、2019年度から3年に1度程度、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で中学3年の全員を対象に、英語の「読む・聞く・書く・話す」の力を見るテストを実施するとの報告書を正式にまとめた。文科省が今後、具体的な制度設計を検討する。17年度のテストから従来の都道府県別に加え、政令指定都市別の成績を公表する。

 英語のテストのうち、「読む・聞く・書く」は国語、数学と同日程で、45分程度の時間を使って行う。「話す」は後日、別日程で実施するとし、準備や入退室の時間も含めて1人当たり10分程度を想定している。

 パソコンやタブレット端末を活用し、録音した生徒とのやりとりを委託業者が統一基準で採点する。

 小学6年を含めたテスト結果の新たな活用策も提言した。18年度から全国平均正答率が50%以上の比較的容易な問題を半数以上正答できなかった児童生徒を重点的な指導が必要な層に指定。その人数を当該の教育委員会や学校に示す。

課題を把握しやすくするため個人票を充実させ、学校向けの成績一覧表を作成するとし、小学6年の成績を中学校に引き継ぐよう求めることも盛り込んだ。